2/19 fumi 堪えられない人間の欲望

妻へ。

人間というのは、マズローの5段階欲求的に言えば、先に生理的欲求を満たす必要があるという。段階というからには、基本的には「食いたい」「寝たい」というファーストステップを掛け上がらないと、次の安全欲求への渇望はいかないということだ。

つまり、人間は基本的には生理的欲求がベースにあるのが殆どであって、私はこれほどマズローが示したかった理論を、職場でまざまざと見せつけられるとは思わなかったので、ここに事件簿を記そうと思う。

事件が起きたのは本日の午後。

昨日、私が日本からの手土産として「ハ○ピーターン」を各課員に配布してもらった。一人当たり2つないし3つの配布になるのだが、私の眼の前に座るリーダーと言われる課の中の管理職の女性(以後、ガイ者)の机には2個配られた。

ガイ者は惜しくも有休中であり、私は目の前に広がるお菓子の山を羨ましく思いながらも、仕事に集中していた。

そんな今日。昨日まで2個あった「ハ○ピーターン」が1個しかない。私は自分の手土産なので2個あって欲しいと信じて探し物をするフリをしてガイ者の机を見渡した。がしかし、「ハ○ピーターン」は1個しかないのである。昨日までは確かに2個あったのだ。

推測すると、1)「ハ○ピーターン」が1日経って蒸発した。2)「ハ○ピーターン」は実は1個しかなかった。3)「ハ○ピーターン」が誰かに食われた。1に関しては「ハ○ピーターン」が蒸発するとは考えられない。「ハ○ピーターン」は水分じゃない。2に関しては、私の記憶が乏しいことは否めないが、10時間近く座り続けて目の前のガイ者の机に「ハ○ピーターン」の置かれた光景を忘れるはずがない。いや、仕事は集中していた。となるとやはり、3しか皆目検討がつかない。

私は、人間の愚かながらも勝てない生理的欲求を満たす為に、ガイ者の机に置かれた「ハ○ピーターン」が犠牲になったと思うと、甚だ切ない気持ちになり、私は自分用に配られた「ハ○ピーターン」を齧った。「ハ○ピーターン」はやっぱうめえな。

こうして、今日も私の生理的欲求は満たされていく。え、私が犯人じゃありませんよ。